【地域×スポーツイベント】
経済効果と成功のポイント

みなさんこんにちは、Otanomiコラム担当です。

地方の人口減少や地域経済の衰退に悩む自治体にとって、スポーツイベントは新たな可能性を切り拓く強力な手段となっています。

実際に、神戸マラソン2024では兵庫県内で約80億円の経済波及効果を創出し(兵庫県公式発表 )、東京マラソン2024では約526億円もの国内経済効果を生み出すなど(東京マラソン財団公式)、その影響力は数字で明確に実証されています。

しかし、「スポーツイベントって本当に地域のためになるの?」「どんなメリットがあるの?」「自分たちの地域でも成功できるの?」といった疑問や不安を抱いている自治体や地域関係者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、スポーツイベントが地域に与える具体的な経済効果から、地方創生における重要性、そして成功を導く実践的なポイントまで、全国の豊富な事例とデータを基に詳しく解説します。地域の未来を変える可能性を秘めたスポーツの力を、一緒に探っていきましょう。

1. スポーツイベントがもたらす多面的な経済効果


スポーツイベントが地域に与える経済効果は、単なる入場料収入だけではありません。多層的で持続的な効果が地域全体に波及し、地方創生の強力な推進力となっています。

直接的経済効果:目に見える即効性のある収益
スポーツイベントがもたらす直接的な収益源には、以下のようなものがあります。

【参加費・入場料収入】
・マラソン大会:参加者1人あたり8,000円〜16,000円
・神戸マラソン2024:フルマラソン参加者約2万人+リレーラン166組
・参加者数が増えるほど直接的な収益も拡大
・安定した収入源として運営の基盤に


【スポンサー・協賛収入】 ・地元企業や全国規模の企業からの支援v ・企業にとっては自社のPR機会
・イベント主催者にとっては重要な資金源
・Win-Winの関係を構築


【公式グッズ・商品販売】
・イベント限定のTシャツ、タオル
・地域特産品との連携商品
・参加者の思い出作りと収益確保を同時実現
・地域の継続的なPR効果も期待



間接的経済効果:地域全体に広がる波及効果
【宿泊・飲食業界への貢献】
神戸マラソン2024の事例 では、以下のような効果が確認されました。

・参加者の約60%が県外から
・多くが1〜2泊の滞在
・参加者1人あたり平均15,000円〜25,000円の飲食消費 ・イベント前後での食事や地域グルメ探索で経済効果拡大


【交通・運輸業界の活性化】
・航空会社、鉄道会社の利用増加
・バス会社、タクシー業界の需要拡大
・地方空港や地方鉄道にとって貴重な収益機会
・閑散期でも大きな需要を創出


【小売・サービス業への波及】
・お土産品の購入
・観光施設の利用
・美容院やマッサージなどのサービス利用
・地域の様々な業種に経済効果が波及
・長期的経済効果:持続可能な地域発展の基盤


【観光地としてのブランド価値向上】
・「マラソンの聖地」としての認知獲得
・「スポーツツーリズムの拠点」としての地位確立
・イベント開催時以外でも継続的に観光客を呼び込む
・地域の知名度向上と観光ブランド確立


【関係人口・交流人口の創出】
・一度参加した人が翌年も参加するリピーター効果
・家族や友人を誘って再訪する拡散効果
・地域に愛着を持つ「関係人口」の増加
・移住促進や地域ファン獲得につながる


【地域住民の健康増進と医療費削減】
・地域住民のスポーツ参加機運の高まり
・継続的な健康増進効果
・中長期的な医療費削減効果
・自治体の財政負担軽減



具体的な数値で見る経済効果の実例
全国の主要マラソン大会の経済効果を見ると、規模の違いはあるものの、いずれも地域経済に大きく貢献しています。

■東京マラソン2024:約526億円(国内)、約375.7億円(都内)
・参加者約3.8万人
・国内最大級の都市型マラソン
・運営費の約14.5倍の経済効果

■神戸マラソン2024:約80億円(県内)、約65億円(市内)
・参加者約2万人
・関西地区最大級、県外参加者60%
・参加者1人あたり約40万円の経済効果

■おかやまマラソン2024:約19.5億円
・参加者約1.5万人
・前年比2.5億円増、過去最高
・滞在日数増加が効果拡大の要因

これらのデータから分かることは、大都市圏ほど効果は大きいものの、地方都市でも十分な経済効果を創出できるという点です。


2. 地方創生におけるスポーツイベントの重要性


スポーツイベントは単なる娯楽やレクリエーションを超えて、地方創生の戦略的ツールとして位置づけられています。文部科学省・スポーツ庁が実施している「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2024」でも、交流人口の増加と地域資源を活用したコミュニティ形成の重要性が強調されています。


人口減少社会における新しい活力源

【交流人口・関係人口の拡大がもたらす効果】
・リピーター効果:一度参加した人が「また来たい」と思う
・口コミ効果:SNSや口コミで地域の魅力を発信
・地域の応援団:新たな参加者や観光客の呼び込みに貢献
・将来の移住候補者:地域との継続的な関わりから移住検討へ

【若年層の地域参画促進】
・イベント運営ボランティアとしての参加機会
・地域への愛着を深める貴重な体験
・将来的な地域リーダーの育成
・若年層の参加率が高いスポーツの特性を活用



地域資源の有効活用と新しい価値創造

【既存インフラの活用メリット】
・既存の道路、公園の活用
・体育施設などの地域インフラの有効利用
・新規建設投資なしで魅力的なイベント開催が可能
・投資対効果が高い

【地域特性を活かした独自コンテンツ】
各地域が持つ固有の資源を活かすことで、他地域との差別化が可能です。
・自然環境:美しい景観をコースに取り入れる
・歴史・文化:伝統文化を応援演出に活用
・特産品:地域グルメの提供で満足度向上
・観光資源:スポーツと観光の組み合わせ



マラソン・ランニングイベントの成功事例

◾️神戸マラソン:都市型マラソンの代表格
「神戸マラソン」 は、2011年の東日本大震災復興支援をテーマに「感謝と友情」を掲げてスタートしました。毎年2万人のランナーが参加し、約80億円の経済効果を創出する関西地区最大級のマラソンイベントです。

成功のポイントは、明確なコンセプトと地域一体となった運営体制です。「感謝と友情」というテーマのもと、地域住民が一丸となって大会を支え、温かいおもてなしでランナーを迎えています。コース沿道での応援パフォーマンスや地域グルメの提供など、走る楽しさと地域の魅力を同時に提供することで、高いリピート率を実現しています。


◾️いぶすき菜の花マラソン:地方小都市の成功モデル
鹿児島県指宿市で開催される鹿児島県指宿市で開催される「いぶすき菜の花マラソン」 は、人口4万人程度の地方都市が主催する大会ながら、毎年1万人以上のランナーが参加する人気イベントです。

この大会の特徴は、地域の自然資源を最大限に活用した魅力的なコース設定です。菜の花畑や開聞岳の美しい景色を楽しみながら走ることができ、「日本で最も美しいマラソンコース」として高く評価されています。県外からの参加者が多く、宿泊を伴う観光客の増加により地域経済に大きな貢献を果たしています。



地域特性を活かした独自スポーツイベント
◾️和歌山県田辺市:武道ツーリズムの先進事例
田辺市では、合気道発祥の地という歴史的背景を活かした「武道ツーリズム事業」を展開しています。市・民間事業者・合気道関係者の3者連携により、本格的な合気道体験プログラムを提供し、国内外から多くの愛好者を呼び込んでいます。

この取り組みの成功要因は、地域固有の歴史・文化資源とスポーツの融合です。単なる観光ではなく、真正性のある体験を求める参加者のニーズに応えることで、高付加価値なスポーツツーリズムを実現しています。


◾️北海道網走市:ラグビー合宿の聖地化
網走市は「ラグビー合宿の聖地」として全国に名を馳せています。夏期の涼しい気候条件を活かし、大学・高校・社会人チームの合宿を積極的に誘致しています。

成功のカギは、地域の自然条件を競技特性と結びつけた戦略的なブランディングです。ラグビーに適した環境を整備し、継続的な誘致活動により「網走=ラグビー合宿」というブランドイメージを確立しました。合宿参加者は長期滞在するため、宿泊・飲食業界への経済効果も大きく、地域経済の重要な柱となっています。


3. 成功するスポーツイベントの企画・運営のポイント


スポーツイベントを成功に導くためには、戦略的な企画と効率的な運営が不可欠です。
全国の成功事例から抽出された重要なポイントを詳しく解説します。


企画段階の重要ポイント

【明確なコンセプト設定と差別化戦略】
成功するスポーツイベントには、必ず明確で魅力的なコンセプトが存在します。
単に「マラソン大会を開催する」ではなく、「なぜこの地域でこのイベントを開催するのか」「参加者にどのような価値を提供するのか」を明確に定義することが重要です。

神戸マラソンの「感謝と友情」、いぶすき菜の花マラソンの「日本一早い春の訪れを感じるマラソン」など、独自のコンセプトが参加者の心を掴んでいます。


【ターゲット設定と市場分析】
イベントの成功には、適切なターゲット設定が不可欠です。
年齢層、居住地域、競技レベル、参加動機など、詳細なペルソナ設定を行い、そのニーズに合わせたイベント設計を行います。

例えば、ファミリー層をターゲットとする場合は、子ども向けプログラムや安全対策を重視し、シリアスランナーをターゲットとする場合は、記録証明や充実した給水・救護体制を整備するなど、ターゲットに応じた価値提供が重要です。


【地域資源の戦略的活用】
地域が持つ自然環境、歴史文化、特産品、観光資源などを戦略的にイベントに組み込むことで、他地域との差別化を図り、参加者に特別な体験を提供できます。



運営体制の構築と関係者連携

【多様なステークホルダーとの連携構築】
スポーツイベントの成功には、行政、地域住民、企業、団体など多様な関係者の協力が不可欠です。
それぞれの利害を理解し、Win-Winの関係を構築することが重要です。

・行政:許可手続き、安全対策、広報支援
・地域住民:ボランティア参加、応援、おもてなし
・企業:スポンサーシップ、サービス提供
・競技団体:技術的サポート、公認取得支援

効果的な実行委員会の組織運営として、成功事例では多くの場合、行政・民間・市民が参画する実行委員会形式で運営されています。各分野の専門家や地域のキーパーソンが参加し、それぞれの知見とネットワークを活用することで、質の高いイベント実現と地域一体感の醸成を両立しています。



参加者満足度向上の具体的方策

【安全・安心な環境の確保】
参加者が安心してイベントを楽しむためには、万全な安全対策が必要です。医療救護体制、交通規制、警備体制、気象対応など、あらゆるリスクを想定した準備が重要です。


【質の高いおもてなしサービス】
地域住民によるおもてなしは、参加者の満足度向上と地域への好印象形成に大きく寄与します。コース沿道での応援、給水ボランティア、案内サービスなど、温かい人的交流が参加者の心に残る体験を創造します。


【充実した付帯プログラム】
メインイベント以外にも、地域の魅力を体験できる付帯プログラムの充実が重要です。地域グルメの提供、文化体験、観光ツアーなど、スポーツ以外の地域の魅力も同時に体験できる仕組みを作ることで、参加者の満足度向上とリピート率向上につながります。



持続可能な運営のための仕組みづくり

【財政基盤の多角化】
イベントの継続開催には、安定した財政基盤が必要です。参加費収入だけでなく、スポンサーシップ、助成金・補助金、グッズ販売、付帯事業など、多様な収入源を確保することが重要です。


【人材育成とノウハウの蓄積】
イベント運営には専門的なノウハウが必要です。継続的な人材育成と知識・経験の蓄積により、年々質の向上を図ることができます。他地域の成功事例の研究や専門機関との連携も有効です。


【効果測定と改善サイクルの確立】
イベントの効果を定量的に測定し、継続的な改善を図る仕組みが重要です。参加者アンケート、経済効果調査、地域住民の意見聴取などを通じて課題を把握し、次年度の改善につなげるPDCAサイクルを確立します。


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まとめ


本記事では、スポーツイベントが地域に与える経済効果と成功のポイントについて詳しく解説しました。

スポーツイベントは、経済効果だけでなく、交流人口の創出、地域ブランドの向上、住民の一体感醸成など、地方創生に必要な多面的な効果を同時に実現できる強力な手段です。神戸マラソンの80億円、東京マラソンの526億円といった具体的な数値が示すように、その経済的インパクトは明確です。

成功の鍵は、明確なコンセプト設定、多様な関係者との連携、地域住民の主体的参画、そして継続的な改善サイクルにあります。完璧を求めず小規模から始め、段階的に発展させることで、あなたの地域も必ず成功できます。

スポーツの持つ人を動かし、心を一つにする力を信じて、今日から第一歩を踏み出しましょう。